不動産が信託されたなら、受託者は信託の登記をしなければなりません。
ここでは、委託者Aさんが、受託者Bさんに、不動産(自宅)を信託した事例を見ていきます。
現在、Aさんが住んでいる自宅をBさんに信託しますと、登記簿は以下のようになります。
不動産が信託されると、所有権に関する事項が記載される権利部(甲区)に信託された旨が登記されます。
名義がBさんに変わっていますが、同時に「信託」と記録され、この不動産が信託財産であることが、誰の目にも明らかにされます。
信託の登記は、不動産登記簿(登記事項証明書)の甲区の欄に2段書きで記載されます。
2段の上段には、登記の目的「所有権移転」と記載され、下段には、同じく登記の目的「信託」と記載されます。
このように、不動産を信託した場合は、登記の目的欄は「所有権移転」のほか、「信託」と登記されます。
(通常の売買等の場合は、登記の目的は「所有権移転」だけです)
これで、ある不動産が信託されたと事実が、登記によって明らかにされるのです。
信託された事実は、「所有権移転」と「信託」で明らかにされますが、信託の内容はわかりません。
信託の内容は、この信託不動産の権利関係を明らかにし、取引の安全を図るためには、信託の内容についても登記されます。
そこで、信託の内容を明らかにする方法として、信託目録が作られます。
登記簿(登記事項証明書)の甲区の「権利者その他の事項」欄に信託目録〇〇号と記載されているのがお分かりいただけると思います。
この信託目録に信託の内容が記載されているのです。
信託目録の主な登記事項は、
①委託者、受託者、受益者氏名及び(名称)
②受益者の指定に関する条件または受益者を定める方法の定めのあるときは、その定め
③信託管理人があるときは、その氏名又は名称及び住所
④信託の目的
⑤信託財産の管理方法
⑥信託の終了事由・・・などです。
尚、信託された不動産の登記事項証明書を請求した場合は、信託目録はついてきません。
信託目録も見たい場合は、信託目録を別途、請求する必要があります。
所有権保存と信託の登記が、行われる場面は以下の通りです。
☑未登記の建物があり、この建物を信託した場合、受託者名義で表題登記がなされ、ついで受託者名義で所有 権保存登記と信託の登記がなされます。
☑委託者の名義で表題登記がなされたマンションが信託された場合、受託者名義の所有権保存登記と信託の登記がなされます。
受託者が信託行為に基づいて、建物を新築し、受託者名義で表題登記をして、受託者名義で所有権保存登記と信託登記する場合
これは、例えば、お金を信託(お金を受託者に任せる)して、受託者がそのお金でマンションを建てたときは、その建物は信託財産になります。この建てた建物が信託財産であることをはっきりさせるために、所有権保存登記と同時に、信託登記がなされます。